途上国の “時間を守れない同僚” に効く方法。「文化の違い」を諦めない! (寄稿:天野 真之介さん)

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*P-projectでは、青年海外協力隊のみなさまからの 寄稿 を募集しています。

青年海外協力隊員として、フィリピンの障がい者雇用支援の活動をしている、天野さん。現地メンバーとの「時間に対する価値観の違い」に悩み、トライアンドエラーで乗り越えたお話を、寄稿していただきました。


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天野 真之介 さん
フィリピン協力隊 6 ヶ月目
職種:コミュニティ開発

イロイロ州ニュールセナ町の社会福祉開発局に配属。
障がい者の生計向上支援・社会参加促進をめざす「野菜クレヨンプロジェクト」を立ち上げ、実行中。
詳しい自己紹介はこちら


 

「野菜クレヨン」で、障がい者が働ける場所をつくる

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メンバーと一緒につくった、野菜クレヨン

フィリピン、ニュールセナ町の社会福祉開発局に配属された私の仕事は、障がい者の生計向上と社会参加の支援をすることでした。

配属当初は、まず、担当地域に21ある村の障害社宅をそれぞれ訪問して、彼らの本当に困っていることを調査しました。最大の課題は、ほとんどの障がい者は職がなく、家の外に出たことが無いということでした。

彼らの話をきいていく中で、「障がいのある彼らにも平等に働くことができる場を作り、毎日が同じで彩りのない生活の刺激になるようなプロジェクトを作ろう」と決心し、野菜クレヨンプロジェクトを立ち上げました。

野菜クレヨンは、フィリピンで豊富にとれる新鮮な野菜とフルーツ、ココナッツオイルを原材料にしています。パラフィンなどの化学物資を使わず、環境に優しいクレヨンです。

クラウドファンディングで資金を集め、試作品をつくり、ワークショップで作り方を教えて・・。最初は孤独な戦いでしたが、今は周囲の理解も得られ、彼らだけでクレヨンを制作し、工程改善もできるようになりました。

いまでこそ彼らとの付き合いかたのコツがわかってきたものの、プロジェクトをスタートした当初は、メンバーとの「文化の違い」に悩んでばかりでした。

 

「時間に対する価値観のズレ」が一番つらかった

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プロジェジェクトを進める中で最も苦しかったのは、時間に対する価値観の違いです。

例えば、新しいプロダクトづくりのために竹のサプライヤーと会う約束をしたのですが、待ち合わせ時刻を2時間すぎても誰も現れない。また、ワークショップなどは生産メンバー全員が集まらないと開始出来ないのに、いつまでたっても全員揃いません。30分遅れは当たり前です。

もちろん、日本人と比べて時間を守るという意識が低いのもそうですが、下記のような途上国ならではの理由があるのも事実。

  1. 雨で移動手段が無くなり、家から出れない。
  2. 子どもの送り迎えがあり、ミーティングは二の次。
    (家族を最も大切にする文化である)
  3. 携帯電話のプリペイドが無く、欠席連絡が出来ない。

でも、毎日のトライアンドエラーの中で少しずつ彼らとうまくやっていく方法を学びました。

 

毎日あたらしい「時間を守る工夫」を試す

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プロジェクトメンバーとのミーティング

彼らの文化に腹を立てるだけでは何も変わらないので、毎日新しいことを考えて実行しました。

例をあげると、

・来たひと順に限定のお菓子を配る(モノでつる作戦)

・ミーティングの最初に大切な話をすると事前にアナウンス
(彼らにミーティングが有意義だと納得してもらえていると特に有効)

・開始が遅くなった分だけ、終わりが延びると伝える
(小さな意思決定や、連絡事項を早く済ませるための短い会議に特に有効)

など。

時間を守ることが、彼らのメリットになるということを試行錯誤しながら毎回伝えています。もちろん、上手くいかないこともありますが・・

 

3つのコミュニケーションを意識

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野菜クレヨンをつくるメンバー

何をするにもスローで、おしゃべりばかり。主体性がなく、約束も守ってくれない・・・。

試行錯誤の中で、そんな彼らと仕事をするときには、次の3つを意識するようになりました。

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①「おしゃべり」に混じって、知りたいことを聞き出す

② 納期は2週間前倒しで伝える、その場でやるまで見届ける

③ 点でなく、線で教える
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①「おしゃべり」に混じって、知りたいことを聞き出す


日本で働いていた時と大きく違い驚いた文化の違いの一つ。「フィリピン人はおしゃべりが多すぎる!!」しかし、今では彼らとのコミュニケーション(おしゃべり) こそが潤滑油と、考えを改めました。

特に一人では解決出来ないような課題にぶつかった時は、おしゃべりしている彼らに話しかけて、無茶ぶり。そうするとあれよという間に彼らの中で話しが進み、解決策を教えてくれたり、現地の業者など最適な人を紹介してくれます。

仕事中におしゃべりしている人を「怠けている」と遠ざけるのではなく、「おしゃべり = 太いコミュニケーション」と捉えることも重要かもしれません。

 

② 納期は2週間前倒しで伝える、その場でやるまで見届ける


なんとしてでも納期を守ろうとするという日本企業とは違い、「仕方がない」で済ましてしまうのが彼ら。「雨・停電・移動手段が無い」という言い訳のような仕方の無い事情は、フィリピンにはつきもの。後々、困ったことにならないように、依頼をする時には2~3週間余裕を持たせています。

日本のビジネスパーソンの「あとでやっておくよ」と現地の同僚のそれとは、質が全く違います。彼らは口癖で「あとで◯◯」と良く言います。その場逃れなのか、気持ちのいいコミュニケーションのためなのかはわかりませんが。

そのため、急を要することを頼む際には、「今やって」と頼むこと。そうすれば、余計な待ち時間もなく、気にかける心配もすることもない。「忙しいから今は無理」or「仕事を引き受けてくれる」の二択を得られます。

 

③ 点でなく、工程を踏まえた「線」で教える


「仕事は一人で成り立つものではなく、多くの人の支援で出来ている」営業時代に、先輩から学んだ言葉です。

クレヨン制作メンバーは、分担して作業をしています。自分の作業の後工程を知ることで、どんな成果物を出せば次のメンバーに迷惑をかけず、効率よく出来るかを考えることができます。

たとえば、クレヨン制作の工程。「材料を混ぜて、ストローと粘土で作った型に粘土を入れて、冷蔵庫で固め、最後にクレヨンをくりぬき、形を綺麗にする」という作業を、担当のメンバーだけでなく全員に一通り学んでもらいました。

そうすることで、動線の工夫や空いた時間に自分がすべきことを、彼らは自分たちで試行錯誤できるようになりました。最初1日100個しかつくれなかったクレヨンが、彼ら自身の工夫によって、いまでは300個つくれるようになりました。すでに私の手から離れた「彼らのクレヨンづくり」になったと実感しています。

 

相手が遅い理由は、「文化の違い」だけではない

同僚の協力で実施できた、村での勉強会
同僚の協力で実施できた、村での勉強会

今では順調に進んでいるクレヨンプロジェクトですが、最初は職場の上司に見向きもされませんでした。「単価の安いものより、フィリピン人は食べ物が大好きだから、食べ物作りなさい。」と・・。クレヨンの試作品が完成するまでは、正直、孤独な戦いでした。

上司の態度が変わったのは、「精度の高い試作品の野菜クレヨン」をつくり、「700人の全障がい者へプロジェクト実施案内」を書いた私の意地だと思います。

上司は、手作りで綺麗な野菜クレヨンが作れるとは思ってもいなかったようでした。さらに、700枚の案内状を上司に持参したその瞬間、彼の態度が驚くほど変わりました。

その後、ワークショップをするための部屋予約・市長への連絡・村へ行く車の手配など、同じ人とは思えぬ、上司の仕事の段取りの速さ。これは本当に、印象的なできごとでした。

プロジェクトの実現可能性を理解してもらい、私の本気度を感じてもらえたことで、上司は行動のスピードを変えてくれました。

 

孤独な戦いの中で、諦めずに頑張れたのは…

慣れない文化の中でたくさん怒ったり悩んだりしましたが、実は私は悩み続ける性格ではなく、トライアンドエラーが得意です。

いつも、その日の悩みを解決するための策を考えてから寝ています。もしくは悩みがイライラに変わって、ストレス発散が必要な時は身体を動かす。次の日に持ち越さないことを常に心がけています。

毎日、試行錯誤をするということは、つまり、毎日のように新しい壁や悩み事にぶつかります。

孤独な戦いの中で、自分を奮い立たせてくれたのは、日本の友人の仕事での活躍や昇進、結婚などの近況報告でした。Facebookは便利ですね。

国は違えど、1 日 24 時間という平等に与えられた時間は同じ。

どんな経験をするのか・どんな知識をつけるのか、どんな人との交流を増やしていくのか。20代後半の2年間は、今後の自分の人生を決めると言っていいほど重要だと思っています。

わたしは協力隊としての活動を終えた後、ここで得た経験を活かして一端のビジネスパーソンになります。それが自分の、協力隊を経験した人の使命なのではとも思っています。

 

半年で慣れた、もう許せる「文化の違い」

プロジェクトメンバーの 仕事についての意識 は今後も改善していきたいですが、生活面では、フィリピン滞在6ヶ月で受けいれてきたこともあります。

・行きはゆっくり、帰りは早い。彼らの時間意識。

・友人宅にご飯に呼ばれて、夜8時を過ぎると外は危ないから泊まっていきなさいと言われる、過剰な配慮。

・食事中にするでっかいゲップ。老若男女、カエルの合唱並にすごい!

私の家へ土足で入ること以外は、大抵受け入れてきた気がします、笑

 

これからも「文化の壁」に挑み続けたい

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わたしは協力隊に参加する前には、IT企業で営業をしていました。「天野に頼みたい、天野だから承認した」とお客様に言ってもらえるのが最大の喜びで、最大のモチベーション維持方法でした。

ここ、フィリピンでも同じです。

現地の人々に、「JICAがいたから助かった」と言われるのではなく、「天野がいたから、天野だったから良かった!」(現地では「しんの」と呼ばれている)と言ってもらえるのが、私の最終ゴールです。

もし諦めたら、もしそこで考えることを辞めたら、他の場所で、地道に努力をしている隊員に先を越されてしまう。いつもそう考えて、モチベーションを保っています。

今はプロジェクトメンバーはクレヨンの制作だけを担当していますが、今後は彼らにも、材料の調達や営業活動を学んでもらいます。

そこでは、やはり「納期を守る意識」をもってほしい。
少しずつ考え方を似通わせたいです。

彼らは特に祭事が近づくと、仕事も学校もそっちのけでお祭り準備。フィリピンの12月は行政も含めてあらゆるものが遅れます。オフィスで仕事をしなくなるからです(もちろん全ての人ではありませんが・・)

彼らには、営業の楽しさも 知ってもらいたいです。
そして、自分自身も彼らとの活動の中で 成長したいと思います。

青年海外協力隊ボランティアとは、途上国へのお役立ちという一方通行ではなく、現地で得た経験をどうやって日本社会で活かすかも大事だと思います。ボランティアを終えて終わりではく、そこからが始まり。

残り1 年、引きつづき仲間と一緒に頑張っていきます!

 

( 寄稿:天野 真之介 さん / 編集:えつこ )


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